2018-05-01から1ヶ月間の記事一覧

お待ちどうさま。

くっくっくっと 箸がお皿の淵にあたる。 ぱちぱちぱちと 油が軽やかに飛び跳ねる。 じゅうじゅうじゅうと 卵がうっすら焦げ目を纏う。 永く身体に染みついた その変わらない優しい香りを ぎゅっと、抱きしめるように吸い込む。 ・ 母の作る卵焼き。 幼い頃か…

命短し 恋せよ乙女。

〝 命短し 恋せよ乙女 〟 耳に残るフレーズだ。 『ゴンドラの唄』(1915) の 冒頭部分である。 そして、こう続く。 〝 紅き唇 褪せぬ間に 〟 赤い口紅をひく乙女でいられる時間は、 案外短いものなのよ。 そんなふうに 言いたいのかもしれない。 ・ ひとはや…

迷える子羊は、幸せなのよ。

“ 迷うこと ” 生きていれば皆、 何度も何度もそれをする。 あなたは、 迷うことは好きだろうか。 ・ 迷う、には 迷わせる選択が付き物である。 選択肢が多ければ多いほど、 ひとは迷うことが出来るのだ。 ・ ぐう。 おなかが鳴る。 今日は丼物の気分かしら。…

作ること、使うこと。

この世界には、作ること、使うこと。ふたつが隣り合わせに存在する。 傘の柄を握りビニール越しの空を仰ぎながら、そんなことを考えていた。 ・ 雨が降る。傘を差す。 雨を作ったのは雲で、雲を作ったのは海だ。 傘を作ったのは、顔も名前も知らないあの子か…

ぴたりと似合う言葉を。

“ 似合う ”を見繕うこと。 わたしの得意なものリストに 最近加えられた項目である。 ・ 愛する彼に靴下を。 愛する彼女に花束を。 記念日でもなければ 誕生日でもない。 そんな『ある日』を 『特別な日』にしてしまうことが 人生の楽しみだったりする。 その…

掬うこと。

星に願いを。 とはよく言ったもので、 “ 夜空に流れる星に 3回お願いごとをすると叶う。” 物心ついたときには、 既にその魔法を知っていたように思う。 あの頃のわたしは なにを願っていたのかしら。 ・ そんなわたしも22歳。 変わらず願うことは続けている…

前提の要らない関係性。

「 別に大した話ではないんだけどさ、」 「 わたしが言うのも烏滸がましいけどね、」 そんな調子で ねえねえ聞いて、と 話しはじめることは常である。 ふと。 ひとはどうしてこうも 手前に言葉を置きたがるんだろう、と 疑問符がむくりと頭を擡(もた)げた。 …