ぴたりと似合う言葉を。
“ 似合う ”を見繕うこと。
わたしの得意なものリストに
最近加えられた項目である。
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愛する彼に靴下を。
愛する彼女に花束を。
記念日でもなければ
誕生日でもない。
そんな『ある日』を
『特別な日』にしてしまうことが
人生の楽しみだったりする。
そのひとの顔を思い浮かべて
なにかを見繕う瞬間が、
どうしようもなく好きだったりする。
そしてわたしの見繕ったものは
どうやらその対象に“似合う”ことが
少しばかり多いらしい。
・
見繕うことは、
まずはじっと対象を見つめること
から始まる。
触れて、感じて、焦点を当てる。
どんな顔をしていて
どんな温度を纏っていて
どんな彩りを含んでいるのかしら。
そんな調子で。
見繕うことは、
対象にぴたりと添うものを選ぶこと
で初めて完了する。
うん、これだ と
力強く頷けるだけ迷ってみたり。
ああ、どうしたってこれだ と
まっすぐ直感を信じてみたり。
・
さて。
これまで見繕う“対象”と
わざわざ暈(ぼか)してみたのは、
わたしが見繕うのは
ものばかりではないからである。
“ 言葉を見繕う ”
誰でも瞬間的にするであろうこと。
それをわたしは
なるだけエネルギーを掛けて
時には時間もかけて、
愛を込めて、生命を込めて
やってみようと試みている。
産まれたての感情。
触れて、感じて、焦点を当てる。
どんな名前を付けようかしら、と
ぐるりぐるりと考えてみる。
時にこれだと、舞い降りる。
そしてようやく、言葉になる。
ぴたりと似合う、言葉になる。
・
今日はあの子に、
どんな言葉を贈ろうかしら。
今日はこの世に、
どんな言葉を産み落とそうかしら。
いつもよりちょっとばかし
丁寧に見繕ってみよう。
とびっきり似合う
とびっきりお気に入りの
お洋服を着て出掛ける日は、
なんとも胸が踊る。
とびっきり似合う
とびっきりお気に入りの
言葉を紡いで手渡せる日は、
なんとも胸が高鳴る。
『ある日』を『特別な日』に。
ぴたりと似合う、あなたの言葉を。