作ること、使うこと。
この世界には、
作ること、使うこと。
ふたつが隣り合わせに存在する。
傘の柄を握り
ビニール越しの空を仰ぎながら、
そんなことを考えていた。
・
雨が降る。傘を差す。
雨を作ったのは雲で、
雲を作ったのは海だ。
傘を作ったのは、
顔も名前も知らないあの子かしら。
作ること、使うことが在ることは
作るひと、使うひとが居ることを意味する。
ごはんを食べる。
電車の吊革を握る。
お布団に身を包む。
果たしてわたしは
何を作ることが出来ているのだろう。
せっかくこの世界に産み落とされたからには、
作ること、使うこと
どちらも担ってみたい。
ちっぽけな好奇心である。
・
わたしにとって、
作ることは表現することだ。
既に作られた言葉を。
筆と紙を。
こっそり拝借して、表現してみる。
わたしの表現した、作り出したそれを
だれが、どんなふうに使ってくれるだろう。
・
灰色の雲をぎゅっと絞る。
最後の一滴がアスファルトに着地する
そのときまで。
ゆらりゆらりと答えを待つとしよう。